ブログ45 新たなご賛同者の紹介と刑事裁判の判決が出された事件の再発防止を速やかに

1 いつも署名活動にご協力賜っておりますことに厚く感謝申し上げます。
このたび、新たにご賛同者として、

石川正さま(弁護士・弁護士法人大江橋法律事務所)
かづきれいこさま(フェイシャルセラピスト・歯学博士・REIKO KAZKI主宰)

におなりいただきました。心より厚くお礼申し上げます。

2 本年11月28日葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件の判決が、同年12月15日和歌山市星涼ちゃん虐待死事件の判決が、それぞれ東京地裁、和歌山地裁で、いずれも父親に懲役10年、懲役9年の判決が出されました。刑事裁判の判決は出されましたが、愛羅ちゃん事件、星涼ちゃん事件の再発防止対策はいまだ講じられていません。

 同年12月18日日本経済新聞夕刊に愛羅ちゃん事件の検証記事が掲載され、私のコメントが載っていますが、私の正確なコメントは「現行の児童虐待防止法では、児童相談所から警察への援助要請の規定はあるが、相互の連携を義務付ける規定はなく、全く連携していない。虐待情報の共有、連携しての家庭訪問など日常的な連携を法律で義務付ける規定を設けるべきだ」というものです。
 愛羅ちゃん事件は、児童相談所が見守り中であった家庭について110番通報があり警察官が急行したが、父親から「夫婦喧嘩」と言われ騙され、愛羅ちゃんの体を確認することなく帰ってしまい、その5日後に殺されたという事件ですが、遺体には40か所のあざがありました。このようなケースを防ぐためには、児相の有する虐待情報を警察に提供することが必要です。そうすることにより、110番通報で警察官が現場に赴いた際に親から騙されることなく虐待を見抜くことができるのです。そのためには、現在警察に情報を提供しようとしない児相に、警察への虐待情報の提供を法律で義務付ける必要があるのです。

 星涼ちゃん事件は、一時保護し施設入所させていた星涼ちゃんを、星涼ちゃんに対する傷害容疑で逮捕されていた父親が起訴猶予にされたことを理由として児相が家に戻してしまい、その2週間後に父親に殺害された事案です。児相の一時保護・施設入所の解除が信じられないほど甘いのです。このようなケースを防ぐためには、一時保護及びその解除の基準―子どもの安全を最優先とし、親の暴力傾向が強い場合等には特に慎重に判断することーを法律に明記し、児相の一時保護・施設入所の解除に際しては他機関の意見を聴き、安全確保計画を策定し、継続的に家庭訪問し子どもの安否を確認することを法律で義務付けることが必要です。何度も何度も何度も何度も繰り返される、危険な親の言いなりに子どもを戻してしまう児相の対応を根本から改めさせるにはこれしかないのではないでしょうか。

 しかし、厚労省は、いまだこのような再発防止策を打ち出していません。これに代わる有効な案を打ち出したとも聞いていません。いずれの対策も、法改正も極めて容易です。国民に何らの義務を課するものではなく、児相と警察に子どもの安全のために連携して対応することを義務付けるだけなのですから。誰の反対も、あらゆる政党の反対もありえません。児相はこれまでの対応が改善を迫られることになりますが、命の危険のある子どもを守るためには当然のことですし、むしろ児相にとってはこれまで児相に丸投げしていた警察から協力が得られるということですから、人員不足や夜間対応、暴力的な親への対応からすでにバンク状態にある児相にとっては、賛成こそすれ反対する理由など考えられません。厚労省はもしこれらの法改正に反対であれば、その理由を全国民に明らかにしていただきたいと思います。なお、警察庁は厚労省から正式に要請があれば反対しないであろうことは前メールで記載したとおりです。官邸に設置された副大臣会議で打ち出される対策には、是非盛り込まれることを期待しています。

 児童虐待の分野で再発防止対策がほとんど全くとられていない理由として、株式会社の役員には会社法上善管注意義務が課せられ、それを懈怠した場合の損害賠償責任、株主代表訴訟の制度が設けられ、民事・刑事の責任追及も厳しいのに比べて、官庁や自治体の幹部にはほとんどといっていいほど責任が課せられず、遺族による糾弾もなく、マスコミや捜査機関の追及も甘いことが考えられることは何度も述べたとおりです。
 わたしは、弁護士の本業として、企業のコンプライアンス・リスク管理の分野を取り扱っていますが、最近の企業のこの分野の取組の進展には目を見張るものがあります。特に自社で起こった事故はもちろんのこと、他社で起こった事故についても大いに関心を持ち、再発防止対策を講じています。その理由の大きなものとして、上記の会社法に基づき取締役・監査役に対して善管注意義務違反が問われることになるとともに、遺族・マスコミ・捜査機関・株主による厳しい追及がなされることがあると思います。一言でいうと企業の役員には緊張感がすごくあるのです。
 児童虐待分野に代表される、企業と比べて著しく立ち遅れている官による再発防止対策を進展させるには、株式会社の役員に課せられている義務と同様の規範を役所の幹部に課するなどの法律の整備が必要だと、今回の法改正を求める活動を行い、改めて痛感する次第です。
 先日、添田孝史「原発と大津波 警告を葬り去った人々」(岩波新書)を読みました。本書に東電のみならず規制当局の津波の想定や対策を講じなかった経緯が詳しく書かれています。痛恨の極みです。このような制度は原発事故の再発防止にも大いに資するものと考えます。