ブログ47 新たなご賛同者の紹介といつまで続く連携しないことにより防げない虐待死

1 いつも署名活動にご協力賜っておりますことに厚く感謝申し上げます。
このたび、新たにご賛同者として、

○田中真紀さま
○岡部俊胤さま(みずほフィナンシャルグループ副社長)
○大野剛義さま(治コンサルタント社長)
○柘植康英さま(JR東海社長)、
○三浦惺さま(NTT会長)
○佐藤茂雄さま(京阪電鉄最高顧問)
○佐々木隆之さま(JR西日本会長)

におなりいただきました。心より厚くお礼申し上げます。
 しかし、一体、厚労省が私どもの提案している法改正案を受け入れない理由は何なのでしょうか、特に、虐待情報の共有と児相・市町村・警察の人員を出し合っての頻繁な家庭訪問による子どもの安否確認を実施しない理由は何かあるのでしょうか、虐待死・虐待のエスカレートを防ぎ、かつ、人手不足の児相の現場を助けることになる対策です。反対するまともな理由などあるのでしょうか。
 本年になりましても、続々と多くの方にご賛同者になっていただき、署名も多数集まっておりますが、厚労省はこの案を受け入れることなく、かといってこれに代わる有効な対案を出すでもなく、漫然と有効な対策を取らず、虐待死事件が続いています。いったいどう責任をとるのか、それとも、責任などとる気がないのか、官の不作為も極まれり、という状態が続いています。

2 案の定といいますか、昨年末には高知市で3歳女児が虐待死させられる事件が発生しました。女児は児相に一時保護されていましたが、その後保護が解除され、死亡の直前に案件が児相から高知市に移管され、1か月の安否確認もできないまま、殺害されたと報じられています。私どもの求める法改正案を厚労省が受け入れ、速やかに現場で実施されていれば、この女の子は殺されることはなかったでしょう。私どもの法改正案が実現すれば、次のような対策を講じることとされています。

1 児童相談所、市町村、警察が連携して被虐待児を保護する
(1) 児童相談所、市町村、警察は、虐待家庭に関する情報を共有し、連携して定期的に家庭を訪問し、子どもの安全を目視で確認し、親への指導・支援を行う。
3 児童相談所が一時保護を子どもの命を最優先として行うようにする
(1) 児童相談所は、一時保護の判断に当たっては、子どもの安全を最優先とし、保護した子どもを親に引き渡す場合には、警察、市町村の協力を得て、安全確保計画の策定及び継続的な安否確認と親への指導を行わなければならない。

何度も述べていますが、児相が把握しながらみすみす虐待死させられている事案の多くは、児相が家庭訪問しない、あるいは家庭訪問の間が空きすぎ、子どもの安否確認と親への指導支援を長期間怠っていることから、その間に殺害されているのです。本事案は一時保護を解除した直後ですから、尚更頻繁な家庭訪問による安否確認が必要な事案でした。このような事案を防止するには、できる限り頻繁に家庭訪問し、子どもの安否を確認し、親に指導支援をしていく、特に一時保護を解除する場合には頻繁に家庭訪問して子どもの安否を確認する、それでも危険が解消しなければ一時保護するしかないのです。
 しかし、児相は体制が貧弱で、児童福祉司一人当たり140件も案件を抱え、家庭訪問どころではないのが現状です。そうであるならば、児相は案件を抱え込まず、子ども虐待にかかわっている市町村と警察と虐待情報を共有し、各機関が人員を出し合ってできる限り頻繁に家庭訪問して子どもの安否を確認するしかないでしょう。一時保護を解除する場合など尚更です。ほかに対案があるのでしょうか。人手をかけるしかないのです。かといって、水道局や土木事務所に応援を頼める話ではありません。民生委員やNPOには責任が重すぎますし、そもそも虐待親がこれらの人の訪問や指導を受け入れるところにはならないでしょう。既に日常的に虐待問題にかかわっている市町村の虐待対応部局と警察が児相を応援して対応するしかないことはご理解いただけると思います。
 なお、交番・駐在所に勤務する警察官は全国で7、8万人程度に上りますが(児相の児童福祉司は全国で2800人)、地域に密着した住民の保護活動を本来業務とし、巡回連絡で管内の家庭を訪問し、一人暮らしの高齢者やDV・子どもの家庭内暴力・少年非行・ストーカーに悩む家庭など困りごとを抱えた住民の相談に応じ様々な支援を行っています。ですから、実は、今でも虐待家庭も巡回連絡しているのですが、児相から警察に対して虐待家庭の情報提供がないため、どこが虐待家庭か分からず、巡回連絡を通じて本来行える子どもの安否、虐待の有無などを確認し児相に情報提供するという虐待防止に有効な取組が行われていないのが実情です(ただし、警察が110番通報等で自ら把握した虐待家庭は分かっていますので、これらの家庭には巡回連絡を通じた虐待防止活動を行うことは今でも可能です。実施している心ある警察官もいるのではないかと思いますが、通達を出すなど組織として行われているとは承知していません)。

 続いて、本年1月には、和歌山県紀の川市で小学生の10歳の男児に対して母親がライターの火を押し付けやけどさせたとして母親が逮捕されました(本件行為は2013年10月)。男児は本年1月7日頭部に傷を負い意識不明で病院に搬送されています。この男児の事案については、市と児相は2013年10月ころに把握し、児相は同年11月から2014年3月までに4回長男と両親に面接し、その後経過観察していた、2013年11月上旬と2014年6月下旬には目の上がはれている、あごにけがの痕がある、足にあざがある、との報告が市や学校から児相に報告があったとされています(産経ニュースweb版2015年1月31日)。
 この報道によりますと、児相は経過観察として虐待が疑われる報告がありながら長期間家庭訪問をせず、一時保護もせず、結果として、男児は意識不明とされる事態に至ってしまいました。頭部外傷が虐待によるものかどうかは現時点で不明ですが、いずれにせよ虐待が継続しながら家庭訪問していなかったようです。児相の次長は「結果から見たら保護も考えるべきだった」と話していますが(同ニュース)、一時保護を行う前提となる家庭訪問による子どもの安否と親の様子の確認をしていないのです。危険な状況を把握していながらも児相の一時保護が極めて不適切なことは繰り返し述べているとおりですが、本事案を含め多くの事案では、一時保護を適正に行うためにも、家庭訪問をいかに頻繁に実施するかということがまず大きな課題なのです。この事案も、私どもの求める法改正案を厚労省が受け入れ、速やかに現場で実施されていれば、少なくとも虐待の継続は抑えられていたでしょう。
 高知市の事案も紀の川市の事案も、児相が他機関と連携して、もっと家庭訪問し、子どもの安否と親の状況を把握していれば、結果は違ったでしょう。これらの事案で検証委員会が作られると、児相はもっと家庭訪問して子どもの安否、親の様子を確認すべきだったとする提言がきっとでると思われますが、人員不足の児相だけでは無理なのです。市町村虐待部局と警察が人手を出し合って児相を応援して行うしかないのです。

 いつまでもこのような事案が続きながら、私どもが求める、虐待情報の共有と児相・市町村・警察が人員を出し合って虐待家庭を訪問し、子どもの安否確認・親への指導支援を実施する、という対応をとることを厚労省が拒否するのはなぜなのか、その理由を厚労省には明らかにするよう求めていく次第です。

3 また、先日、児相の職員の方と話す機会があり、警察との連携は歓迎するという意見の一方、児相が家庭訪問をしない、あるいは間隔かあきすぎることが原因で虐待死が防げていないという事実に、そのような認識がない方がいました。これには大変驚きました。
 児相が関与しながら虐待死を防止できない原因と理由を真摯に考え、それへの対策を講じていく、このような姿勢こそ、子ども虐待にかかわる機関及び職員には必要です。厚労省にこそ最も必要なことです。私どもの法改正を訴えるパンフレットや副大臣会議及び厚労省専門委員会に提出した資料には、このような数多くの事件を原因と併せて明示しており、それらを受け取っている厚労省からは何らの指摘も反論もありません。厚労省は、上記の児相の職員のように認識していないわけでなく、十分な家庭訪問による子どもの安否確認が行われていないことが虐待死を防止できない原因であるという事実を認識しているのです。
 それにもかかわらず、いつまでも有効な対策を講じないことは、子どもを守る責務を放棄したものであり、今後同様の虐待死事案が起こった場合には、予見可能性があり結果回避措置が可能であるにもかかわらず結果回避措置を講じなかったということになり、現場の児相の担当者のみならず、厚労省の有効な対策を講ずべき責任ある立場の者にも業務上過失致死罪が問議されうるのではないでしょうか(薬害エイズ事件では厚労省の担当課長が同罪で有罪判決が確定しています)。

 厚労省の対応をみていると、法改正を求める多くの署名が集まり、社会のいろんな立場にある方からの賛同がどんどん増えようが知ったことじゃない、余計なお世話だ、これまでの対応を何も変える気がない、とタカをくくっているのだなと痛感します。役人根性丸出しで、官の不作為もここに極まれり、官の不祥事の歴史にまたまた一頁を加えるものとなりましたが、命にかかわりのない事案であればともかく、多くの子どもの命をいつまでも犠牲にするこのような対応が許されるはずもありません。