ブログ69 2016年は、まずは子ども虐待死ゼロを目指す法改正の実現を!

 新年あけましておめでとうございます。
 いつも「子ども虐待死ゼロを目指す法改正を求める署名運動」にご理解ご協力を賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。
 2015年も子ども虐待問題は一向に解決の兆しもみえませんでした。児相への通告件数は89,000件に上り、市町村への通告を含めるともっと増えますし、いずれにせよ氷山の一角にすぎず、実際に虐待されていることもの数は、大変な数に上ります。虐待死させられた子どもの数は最近では毎年70名から120人程度に上りますが、病院、警察での虐待の見逃しあるいは立件できなかったケースが少なからずあることからすると、もっと多くに上ると思われます。

 昨年12月21日に、厚労省、警察庁、文科省、総理大臣官邸に、子ども虐待死ゼロを目指す法改正を求める署名と、具体的な法改正を条文化した要望書を提出しました。

2015年12月21日厚労省・警察庁等提出法改正要望書

 厚労省の虐待対策室長さんに提出した際には、福井大学で脳科学の観点から虐待が子どもの脳に与える影響を研究しておられる友田明美教授から、虐待が子どもに及ぼす身体的なもののみならず、脳への悪影響を通じてもたらされる様々な病とそのために必要となる膨大な医療費についてご説明いただきました。友田先生の研究室のHPは下記のとおりです。

 https://tomoda.me/staff/tomoda.html

 子ども虐待は人道的に許されないものであるというのみならず、ここまで悪化すると、膨大な財政支出と若年層の労働力の喪失をもたらし、経済成長の阻害要因にもなっているのです。行政府あるいは立法府はこのような事実を認識さえすれば、自ずから取るべき対策は明らかです。

1 まずは、私どもが求める「子ども虐待死ゼロを目指す法改正」の実現です。虐待死を防ぎ、虐待のエスカレートを防止するためには、虐待家庭に頻繁に訪問し、子どもの安否確認と親への指導支援を継続して行うことが必要なことは言うまでもありません。しかし、児相は一人当たり虐待案件を140件も抱えながら、警察との情報共有を拒み、案件を抱え込んで家庭訪問すらせず放置しているのが現状です。これを改めないと何も変わりません。年末のあるシンポジウムで、児相に勤務した経験のある方が、「せいぜい対応できるのは20件くらい。あとの100件以上は1年ほどたって、どうか無事でいますようにと願いながら、電話するだけです」と発言されていました。当然そうでしょうね。
 私は、子どもの安否確認と親への指導支援を充実したものとし、虐待の継続を抑止するためには、1人当たり20件でも多すぎるのではないかと思いますが、いずれにせよ、1人当たり140件を抱えているという現状は話になりません。この方のお話のとおり、大部分はほったらかしにされているのです。日本の児相の20倍から30倍の体制を有するアメリカやイギリスの児童保護部局ですら行っている、警察との情報共有と連携しての対応をするしかないのです。それを求める私どもの法改正を厚労省と警察庁はぜひ受け入れていただき、次期国会で予定されている児童福祉法等の法改正に盛り込んでいただくよう強くお願いする次第です。誰も反対する人などいません。厚労省と警察庁さえ合意すればできるのです。なお、2016年1月1日日本経済新聞では、特別養子縁組についてあっせんを手掛ける民間事業者を許可制とするという議員立法とあわせ、厚労省は児童福祉法を改正し、児童相談所の業務に「特別養子縁組のあっせん」を追加し、専門部署や担当者の拡充を目指す、と報じられています。これは私どもシンクキッズの法改正の要望項目の3の(3)に当たります。この前提として、特別養子縁組の対象となる子育て困難な妊産婦の方を把握する制度の創設が併せて必要です。厚労省にはぜひその点も含めて法制化をお願いいたします。もちろん、児相と警察の情報共有と連携しての対応の義務付けも含めて。

2 次に、公然と行われている性虐待の禁止が必要です。私どもシンクキッズは、昨年10月に、計11団体と連名で、厚生労働省等に低年齢の児童のポルノである着エロとJKビジネスについて児童福祉法を改正して規制していただくよう要望書を提出しました。これらは子どもの性の商品化であり、性虐待そのものです。着エロの場合は親の関与、JKビジネスの場合は親のネグレクトにより、このような被害にあう子どもが少なくありません。しかも、これらが公然と行われ、規制する法律がないということは、恥ずかしい限りであり、速やかな法規制が必要です。

3 さらに、虐待に至る大きな原因一つである貧困の改善が必要です。中でもシングルマザーが貧困に陥る大きな原因である元夫から養育費が支払われないことについては早急な改善が必要です。現在元夫の2割程度しか支払わず、しかも低額です。子どもがいるにも関わらず日本ほど容易に協議離婚を認める国はほとんどありません。多くの国では養育費がしっかり定められているか裁判所が関与し、不払いには源泉徴収や国の機関による取り立てなど強制力により担保しています。このような制度は子どもが貧困に陥り、虐待を受けることに多くの効果があります。日本では全くこのような配慮がありません。養育費の不払いという身勝手な親により子どもが貧困に陥り、虐待を受けるに至るという連鎖を断ち切る法整備が必要です。

4 そのほか、虐待問題の改善のために必要な取組は山ほどあり、どこから手を付けていいのかわからないほどですが、私としては、とにかく、子どもが3日に1人が殺されているという現実を踏まえ、直ちに法改正をして、児相と警察の情報共有と連携しての取組を制度化し、できる限り虐待死と虐待の継続を防ぐという現場レベルの取組を緊急に強化したうえで、制度的に、着エロ、JKビジネスの禁止、養育費がシングルマザーに手渡されるような法整備その他の山積みする課題の解決に向けた取組みをしたいと考えています。

 本年も皆様のご理解ご支援をお願いいたします。