ブログ74 SOSを求める男子生徒の求めにかかわらず児相が保護せず自殺する事件が発生しました

 いつも「子ども虐待死ゼロを目指す法改正を求める署名運動」にご理解賜っておりますことに厚く御礼申し上げます。
 新たな賛同者として、山田不二子さま(医師・認定NPO法人チャイルドファーストジャパン理事長)、矢満田篤二さま(社会福祉士・元愛知県児童相談所職員)、駒崎弘樹さま(認定NPO法人フローレンス代表理事)におなりいただきました。心より厚くお礼申し上げます。

 両親から虐待を受けて相模原市児童相談所に通所していた男子中学生が自殺を図り、今年2月に末に死亡していたことが市関係者への市関係者への取材で分かった。男子生徒は児相に保護してほしいと繰り返し訴えていたが、相模原市児相は見送っていた、と報じられています(以下も含め、2016年3月22日読売新聞から引用)。
 2013年秋、生徒の顔にあざがあることから学校が児相に通報、相模原市児相が虐待案件と認定し、両親に対して児相が指導を行っていたが、暴力は止まらず、男子生徒は深夜にコンビニ店に駆け込み警察官に保護されたこともあった。児相職員には「家に居場所がない」「児童養護施設で暮らしたい」などとたびたびSOSを出していたが、児相は「緊急性はない」として保護しなかった。しかし、14年10月上旬、両親が児相の指導に反発し、男子生徒を通所させることをやめさせた、児相は男子生徒の学校に「注意して見守ってほしい」と依頼したが、この時点でも保護を見送り、両親や男子生徒と連絡を取り合うことを中断、同月末には学校側から「虐待が続き(男子生徒が)児相に助けを求めている」との通報を受けたが、家庭訪問などを行わず、対応を学校に委ねていた、男子生徒はこの半月後の11月中旬に家を飛び出し、近くの親族宅で首をつった、遺書はなかったが家を出る直前にも親から暴力を受けていた、と報じられています。

 許されざる、呆れるばかりの対応ですが、これまでも何度も何度も児相が繰り返している対応です。私どもシンクキッズが求める「子ども虐待死ゼロを目指す法改正」が必要であることを如実に示した事件です。

 まず、児相の一時保護を子どもの安全を最優先に行うため法律に基準が明記されていたら、こんなずさんな対応はありえなかったでしょう。暴力を受け、逃げ出し、保護を求める子どものSOSに応じない、ということなどありえないのですが、児相のこのような対応は珍しくありません。親との対立を避けたいという事なかれ主義から、明らかに一時保護が必要と思われるケースでも児相は一時保護しません。このような事案を防ぐためには、私どもの求める「児相の一時保護を子どもの安全を最優先とするものとするため基準を明記し、必要な場合に一時保護を義務付ける」しかないのです。
 また、本件でも学校は男子生徒のことを心配し、児相に一時保護を求めていたと思います。それでも、児相が他機関の意見を聴かず、独善的に、一時保護しないということは決して珍しくありません。私も、乳児が父親から大けがを負わされながら一時保護しようとしない児相の対応に不安を覚えられた病院から相談を受け、児相に怒鳴り込みに行き、ようやく児相に一時保護させたことがありますが、とにかく、子どもの命が心配で児相に一時保護を求める学校や病院の意見を無視して一時保護せず、そのまま子どもが虐待死させられるという事案が嫌というほど繰り返されているのです。

 次に、親が指導を拒否した場合に、指導を打ち切るなどありえない対応です。虐待をやめないというメッセージなのですから、一時保護するか、警察に連絡し連携して頻繁に家庭訪問し、親を指導・説得し、子どもの安全を確保する、のいずれかが必要で、放置することなどありえないことです。指導を拒否するということは虐待の継続・エスカレートの危険が高まっている証拠です。親に拒否されて指導を打ち切ってどうするのか。あり得ない、あり得ない対応です。しかし、昨年長崎県で虐待を受けながら児相に保護されなかった10歳の女児が児相に損害賠償を請求した事案でも、児相は親が指導を拒否したらそれっきりにしていました。同様の対応をこれまでも児相はいやというほどしているのです。紹介するのも嫌になりますので紹介しませんが、私のブログをご覧ください。いやというほど同様の対応を繰り返しています。

 さらに、本件は警察も認知していながら、児相と連携して家庭訪問し、親を指導する、あるいは男子生徒からの相談に乗る、励ますなどの対応をしていないとみられることが大きな問題です(詳細は不明ですので、もしかしたら警察が何らかの対応をしているかもしれませんが、その場合には訂正します。)。本件では男子生徒がコンビニに助けを求め警察が保護したというのですから、警察はその後も虐待を受けていないか、児相任せにせず、児相、学校と情報共有し、連携して虐待抑止に取り組むべきでした。具体的には、児相と連携して家庭訪問して親に対しては虐待しないよう注意し説得する、子どもには「何かあったらいつでも警察に言ってきてほしい。君を守るから」と励ますなどの対応をしていれば、児相が何もしなくても、子どもは警察を頼りにして、自殺するようなことはなかったと思います。助けを求めても児相はもちろんのこと、警察も何もしてくれない、そういう絶望がこの男子生徒を襲ったのではないでしょうか。

 私どもシンクキッズの求める「子ども虐待死ゼロを目指す法改正」が実現していれば、多くの段階で虐待の抑止が図られ、男子生徒が自殺に追い込まれるようなことはなかったと思います。

○「児相と警察が情報共有し、連携して頻繁に家庭訪問し、子どもの安否確認と親への指導支援を義務付ける」ことが実現していれば、虐待の抑止は図られたでしょうし、警察が男子生徒を励ますことで、男子生徒は自殺に追い込まれることは防止できたでしょう。
○「通告先が所在不明、転居で所在不明、親が調査拒否、指導拒否するなど子どもに危険が生じていると認められる場合には児相は直ちに警察に通報する」ことが実現していれば、警察から親を指導・説得することにより、虐待の抑止が図られ、上記と同様に男子生徒は自殺に追い込まれることはなかったでしょう。
○「子どもの安全を最優先するために一時保護の基準を法律に明記するとともに、学校や病院、市町村の意見を児相が尊重しなければならないことを義務付ける」ことが実現していれば、さすがに児相は男子生徒を一時保護していたでしょう。

 児相のこのような腰を引いた対応、さらには、警察とは情報共有もせず、連携もしない、子どもの安全を心配する学校や病院、市町村の意見も無視して一時保護しない、という児相の他機関排除・独善的な体質は一向に変わりません。警察も児相に対応を丸投げする姿勢が依然として強くみられます。神奈川県警察は、厚木市理玖ちゃん餓死事件でも、当初理玖ちゃんを保護しながら、児相に通告後は児相に対応を丸投げしていました。丸投げされた児相も家庭訪問も何もせずほったらかしにしたため、理玖ちゃんは餓死させられてしまいました。二つの組織は、またまた同じようなことを繰り返しています。

 厚労省は今国会で児童虐待防止法等の改正を行う予定です。厚労省は警察庁とともに、この貴重な事件を教訓に、是非とも、児相と警察との情報共有と連携しての対応、一時保護を子どもの安全を最優先とするための基準の明記などを内容とする「子ども虐待死ゼロを目指す法改正案」を取り入れていただきますよう、お願いいたします。(といいますか、取り入れない理由、拒否する理由が全く理解できないのですが・・・。私の元の職場の警察庁は一体どうなってしまったのか・・・。再発防止策が明らかでありながら何もせず、同様の事件が起こり子どもの命が失われたら、警察庁は一体どう責任を取るつもりなのか・・・。)