ブログ89 自由民主党埼玉県連、埼玉県・埼玉県警察に児童相談所と警察の情報共有を求める要望書を提出

 いつも「子ども虐待死ゼロを目指す法改正」の実現に向けた活動にご理解ご支援賜り誠にありがとうございます。

 2017年5月17日に自由民主党埼玉県連に、19日に埼玉県・埼玉県警察あてに、添付のとおり、児童相談所、市町村と警察の情報共有と連携しての活動を求める要望書を提出し、県政記者クラブで記者会見しました。翌日の産経新聞の記事です。

https://www.sankei.com/region/news/170520/rgn1705200028-n1.html

 本年4月、鶴ヶ島市で同市にDV相談がなされ、要保護対策地域対策協議会に報告されていた家庭で父親が1歳児を殴り意識不明の重体にした事件が発生し、平成28年1月には、狭山市で3歳の女児が母親と同居男性からやけどを負わされ放置され虐待死させられるという痛ましい事件が発生しました。このほか埼玉県内では、平成24年7月には朝霞市で当時5歳の男児が児童相談所と市が把握しながら、平成23年8月には春日部市で当時5歳の男児が、平成20年2月には蕨市で当時4歳の男児が、いずれも児童相談所と警察が把握しながら、虐待死を防げなかった事件が発生しています。関係機関の情報共有と連携しての活動がなされていれば、子どもたちは虐待死させられることはありませんでした。

 自由民主党埼玉県連は、埼玉県虐待防止条例の制定を検討中で意見を募集されておられましたので、それに応じ5月17日に要望書を提出いたしました。埼玉県の自民党の県議の皆さんは、児童虐待防止に大変熱心で、私は数年前に研修してほしいと依頼され、お話をさせていただいたことがあります。それが今回こうした条例制定の動きにつながり、ありがたい限りです。自民党への要望書と同様の内容の要望書を埼玉県知事と埼玉県公安委員会委員長あてに提出いたしました。内容は次のとおりです。

①児童相談所長は、児童虐待の疑いのある旨の通告を受けた場合には、児童の所在地を管轄する警察署長に通報するものとする。

②警察署長は、110通報や相談の受理、迷子、深夜はいかいの児童の保護、巡回連絡等の地域活動を通じ、被虐待児又は虐待家庭に係る案件につき対応した場合には、その状況を速やかに児童相談所長に通報するものとする。

③児童相談所と市町村、警察は、連携して事案の危険度に応じて適切な頻度
で家庭訪問し、常に情報を共有しつつ、児童の安否確認と親への指導・支援を行うことにより、児童に対する虐待の継続・エスカレートを抑止するものとする。

④児童相談所は、一時保護を解除しようとする場合には、事前に警察に連絡の上、必要な場合には警察の協力を得て、保護者と同居し又は親密な関係にある者(以下「同居人」という。)の有無、保護者(同居人がいる場合には同居人を含む)の暴力的傾向の有無、生活状況等を調査し、子どもの安全が確保できるかどうか十分に調査するものとする。

⑤児童相談所は、一時保護を解除し、保護者に児童を引き渡す場合には、あらかじめ警察、市町村、子どもが在籍している保育園、学校、病院等と協議の上、子どもの安全を確保するための計画を策定し、関係機関が連携して適切な頻度で家庭訪問を行うなどして子どもの安全確保を図るものとする。

 上記①の情報共有は高知県と高知市が平成20年から実施しており、明石市も本年4月から実施しています。上記④と⑤は、私どもの昨年11月の要望書を受け、本年4月から大阪府警察と大阪府・大阪市・堺市の児童相談所との間で行われることとなった情報共有の一環として一時保護解除事案についての児童相談所から警察への情報提供の仕組みです。ちなみに大阪府警察では、新たに行われるようになった情報提供に基づき、乳幼児健診未受診で所在不明となった8ケ月の乳幼児を名古屋まで探しに行き、保護する、という素晴らしい対応をしています。児童相談所と警察との情報共有と早期の連携が大きな効果があることが明らかになった事件です(添付産経新聞参照)。
上記①により、児童相談所から警察に対して情報提供がなされれば、児童相談所が把握している被虐待児・虐待家庭について110番や相談の受理、迷子や家出少年の保護等をした場合に、被虐待児であることを念頭に虐待を見逃すことなく適切に対応できることになるわけですが(児童相談所の情報提供がなことから警察が虐待を見逃しみすみす虐待死させられてしまったものとして葛飾区1歳児虐待死事件)、上記②は、その対応の状況を警察が児童相談所に報告することとすることにより、児童相談所が虐待家庭について最新の情報を得ることが出来ることになり、一時保護等適切な対応ができることになるというもので、本来児童相談所にとって歓迎すべきものです。上記③は、情報共有をしたうえで、特に危険な家庭、保護者が児童相談所職員を威嚇して子どもに会わせない(埼玉県蕨市餓死事件)、児童相談所の職員が11回訪問したが2回しか会えない(足立区ウサギ用ゲージ監禁虐待死事件)、通報先の虐待が疑われる家庭が分からない(大阪市姉弟マンション放置餓死事件)などの事案については、児童相談所はそのまま放置するのではなく、警察と連携して家庭訪問し、子どもの安否確認と親への適切な指導支援を行うことが重要です。上記の各事件で、児童相談所が警察に連絡していれば、子どもたちがかくも残酷に殺されることはありませんでした。

 自由民主党埼玉県連には、是非、上記の内容の条例をお作りいただきたくお願い申し上げます。そして、埼玉県知事には是非それを受け入れていただき、児童相談所と警察との情報共有と連携した活動を実現していただき、子どもたちを虐待から守っていただくよう強く要望いたします。このような内容の条例は全国初です。この条例の制定により、埼玉県での児童虐待防止に画期的な効果があると確信しています。そして、この条例が全国に広がることにより、日本中の膨大な数の虐待を加えられている子どもたちの命が守られることを心から願っております。
 本来は、厚生労働省が私どもの要望を受けいれ、法改正をしてくれればすむ話なのですが、私どもが活動を始めてから2年半にわたり、今国会に児童虐待防止法の改正案を提出しながら、昨年5月の参議院厚生労働委員会の附帯決議で児童相談所と警察の間で虐待情報を「漏れなく確実に共有する」よう検討することが盛り込まれながら、いまだに拒否していますので、自治体に期待するしかないというのが実情です。それにしても、厚生労働省の長年にわたる不作為というよりも積極的な拒否、国会の附帯決議の無視は、子どもを守るはずの官庁として理解できません。