ブログ100 年末まで残虐な事件が続きますが、茨城県では全件情報共有が実現しました

1 平成29年12月、大阪府箕面市で4歳児の歩夢ちゃんが母親と同居の男2人から暴行を受け殺害されるという事案が発生しました。詳しい経緯は承知しておりませんが、本件については大阪府の児童相談所と箕面市が把握し家庭訪問する等していたものの、警察とは情報共有がなされていなかったと報じられております。私どもが昨年11月に提出した要望書を大阪府が受け入れ、児童相談所、市町村と警察が情報共有の上連携して活動していれば、歩夢ちゃんはかくも残酷に殺害されることは十分防げたと考えられます。1年以上経過しながら、いまだ大阪府・大阪市・堺市は警察との情報共有にほとんど応じないまま、こういう事件を引き起こしています。大阪府の副知事さんとも直接お会いしお願いしておりますが、大阪府、大阪市、堺市には直ちに警察との全件情報共有と連携しての活動に応じていただきたく、また、年明けには箕面市・大阪府に働きかけを行ってまいります。

 また、大阪府寝屋川市で女性が子どものころから16、17年間も両親から監禁され、十分な食事も暖房も与えられず体重がわずか19キロとなり、凍死させられたという残虐極まりない事件が明らかになりました。小学生6年の3学期ごろから登校しなくなり中学校はほとんど登校しなかったとされています。学校や教育委員会、市は何をしていたのか。親をちゃんと説得したのか、自分たちだけでだめなら児童相談所や警察に連絡したのか、他の機関は知っていたのか、情報共有したのか、どういうフォローをしたのか、いつ打ち切ったのかなど厳しく検証しなければなりません。子どもの所在不明事案であり、極めて残虐な虐待事件です。本来なら強制的に家庭に立ち入り、この女性を子どものときに助け出さなければならなかった事案です。過去には、福岡で親が十数年子どもを家に監禁し、児童相談所が知りながら警察に連絡せず放置し、子どもが18歳当時家から逃げ出し警察に保護されたという事件が発生しています。やはり関係機関の情報共有が不可欠なのです。私どもは、所在不明児童事案についても、学校、市町村、警察が情報共有の上連携して発見・保護活動を行うことを義務付ける法改正を求めておりますが、この点につきましてもできる限り早期の実現を求めてまいります。

2 一方、茨城県では平成29年12月14日、児童相談所の把握した虐待案件全件を警察に提供することで合意していただきました。この経緯は、元々、茨城県では県と教育委員会と警察とで連携して子どもを守るという取組に合意がなされていたところ、9月に読売新聞が茨城県の児童相談所が一か月の傷を負わされた小学生につき学校から児童相談所に通告がなされ、児童相談所が一時保護したにもかかわらず、警察に連絡しなかったところ、別途情報を入手した警察が傷害を負わせた母親の交際男を逮捕した、調査したところ茨城県の児童相談所は1%未満しか警察に通報しておらず、ほとんど連携がなされていないとの記事が掲載されたことから、当職が茨城県と県警に全件情報共有を要望したところ、わずか3ケ月で合意いただいたというものです。茨城県と茨城県警察には心から厚くお礼申し上げます。他の都道府県も是非茨城県を見習っていただきたいと切に思います。

 これまで茨城県とほぼ同じ対応しているのが千葉県です。千葉県では、平成26年 11 月、市原市で23 歳の父親により当時 8 カ月の賢大ちゃんが死に至らしめられるという事件が起こりましたが、父親はそれ以前の同年 5 月、当時 2 カ月の賢大ちゃんの腕を骨折させ、賢大ちゃんは児童相談所に一時保護されましたが、児童相談所は警察に連絡しませんでした。児童相談所は10月に一時保護を解除し、その 1 カ月後に虐待死させられたというものです。児童相談所が骨折させられるという重傷事案につき、案件把握時に直ちに警察に通報し、警察が父親を逮捕等していれば、賢大ちゃんは死に至らしめられることはありませんでした。こういう事件が千葉県で起こっていることを踏まえ(さらに平成23年5月千葉県柏市で児童相談所が関与しながらみすみす子どもを虐待死に至らしめた事件が起こっています)、私どもは、茨城県への訪問とほぼ同時期に千葉県庁を訪問し、千葉県の担当課長さんと千葉市の児童相談所の課長さんと面談し、警察との全件情報共有と連携しての活動をお願いしました。引き続き千葉県の部長さん、千葉市の局長さんにご説明させていただく機会をお願いしております。いまだお返事をいただいておりませんが、茨城県と同様ご理解いただけるのではと大いに期待しております。

 また、愛知県大府市では、2歳の長男に睡眠導入剤などを大量に飲ませて殺害しよう
した37歳母親が、殺害未遂の疑いで12月6日に逮捕されました。12月4日長男の様子がおかしいと気がついた祖母が病院へ連れて行き、急性薬物中毒と判断されICUで入院し、6日に退院、警察へ情報提供されたものです。この家庭について大府市は11月には把握し、家庭訪問や電話連絡を行っており、児童相談所も11月下旬にこの家庭に関する通告を受け、1回家庭訪問し、その後電話連絡をしていました。児童相談所と市はこの家庭について情報共有をしていたものの、警察とは情報共有していませんでした。幸い一命は取り留めましたが死に至らしめられる危険が十分ありました。

 このようなケースについて、児童相談所は「危険性が低いと判断される」案件は警察ど他機関と情報共有する必要はないなどというのですが、虐待死等重篤な事案は児童相談所が危険性が低いと判断し他機関と情報共有せず案件を抱え込んだ事案で発生しているのです。案件把握時にすべての情報を得ているわけでもなく、虐待の急なエスカレート親の精神状態の悪化、暴力的な同居人の出現等の事態も珍しくありません。神ならぬ人間の身で「この案件は危険性が低いから他機関と情報共有せずとも大丈夫」との判断は傲慢です。児童相談所知りながら虐待死に至らしめた案件につき「その時点で危険性が低いと判断したのは間違いでない」などと弁明することが多いのですが、警察、学校等と情報共有もせず案件を抱え込むこと自体が致命的な間違いなのです。
 警察に情報提供しないために児童相談所が把握している虐待家庭に警察が対応しても警察が虐待を見逃してしまうリスクが生じているほか(東京都葛飾区愛羅ちゃん虐待死事件など)、児童相談所は警察に虐待家庭につき情報提供していれば、その家庭につき警察が対応した場合にはその状況につき警察から報告を受け、最新の情報を把握することが出来るのに、警察への情報提供をしないことにより、自らその機会を放棄してしまっているのです。子どもを守ることを真剣に考えるのであれば、到底とりえない対応と言わざるを得ません。情報共有の対象を児童相談所が危険性が高いと判断した案件に限定することは極めて不合理で、こんな対応を続ければいつまでも児童相談所が関与しながら虐待死に至る事例はなくなりません。

 私どもは、平成27年10月、愛知県知事と名古屋市長あてに、児童相談所と市町村、警察との全件情報共有と連携しての活動を求める要望書を提出し、記者会見しましたが、愛知県、名古屋市にはいまだ応じていただいていません。是非、愛知県、名古屋市には、警察との全件情報共有と連携しての活動に応じていただきたく、年明けに再度お願いに上がる所存です。

3 児童相談所、市町村だけでは虐待から子どもを救うことなど出来ません。警察、学校、病院等多くの関係機関で情報共有し、それぞれの機関ができるだけ連携して活動しなければ子どもを守ることはできません。それでも救えないことはあると思います。しかし、児童相談所と市町村で案件を抱え込んで無策のままみすみす虐待死に至らしめるのと、警察を含め関係機関が子どもを守るため出来るだけのことをするのとは大いに違います。わが国ではありえないことに、高知県と茨城県以外では、そのような当たり前の態勢すらできていないのです。
 一方で、茨城県以外でも理解は着実に進みつつあるように感じています。兵庫県では12月25日に児童相談所所長会に出席させていただき、警察との全件情報共有と連携しての活動をお願いさせていただいたところ、ご理解いただけるように感じております。年明けの1月12日には大阪府の児童相談所の所長さんと同様の機会をおつくりいただいております。神戸市も同様です。また、全国の多くの市町村に設置されている要保護児童対策地域協議会の実務者レベルの会議に警察が参加し、虐待案件の情報共有が行われているところはかなりの数に上っています。

 来年こそ、全国で児童相談所、市町村、警察とで全件情報共有の上連携して子どもを守るために活動するというベスト(といいますか、当たり前)の態勢を作り、「子ども虐待死ゼロ」に向けた一歩が踏み出せるよう取り組んでまいる所存です。