ブログ127 日曜討論「完全アウェイ」の人選のNHKの深謀遠慮に感謝(2)

1 前メルマガのとおり、NHKの深謀遠慮には深く感謝しておりますが、何人かの方のご指摘で知りました他の出演者の方の経歴は下記のとおりで、児童相談所OBが2人、長年厚労省の委員などを歴任されている方3人(1人は児相OB)、これは、厚労省の統計不正問題で厚労省と近い立場の方が委員長となり、その第三者性が批判されている問題と同じ問題を抱えているのではと感じております。すなわち、

●山縣文治関西大学教授は東京都目黒区結愛ちゃん事件を検証した厚労省の専門委員会の委員長をされ、昨年10月に報告書を出されました。私どもは、東京都の児童相談所が親から面会拒否された際に、高知県等の児相のように、面会拒否された際には直ちに警察に連絡し警察と一緒に家庭訪問するような連携態勢がとられていれば、結愛ちゃんは救えたと主張し、そのような連携方策を取るよう求めているのですが、このような問題点も改善策の指摘も全くありません。その他「新たな社会的養育の在り方に関する検討会」、「子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ」の委員等を歴任されています。

●奥山真紀子医師は厚労省の新たな社会的養育の在り方に関する検討会、子ども家庭福祉人材の専門性確保ワーキンググループ、市町村の支援業務の在り方に関する検討ワーキンググループ(市町村WG)の委員等を歴任されておられ、市町村WGの委員として現行の「要保護児童地域対策協議会設立・運用指針」の改正に携わられました。

 現行の同指針では、「主たる支援機関の中でも警察署は、通報を受けて子どもの安全確認 に対応する機関であり、地域協議会で登録されたケースを把握しておくことは安全確認時の判断に大きく資することとなる。このため、必要に応じて警察署の参画を求め、情報共有、意見交換等を行うことが求められる。」と記載されている点について、厚労省の原案は、「必要に応じて」でなく「可能な限り」でした。しかし、市町村WG第8回会合において、厚労省案に対して、委員である加藤曜子流通科学大学教授が「ケースの進行管理等を行う実務者会議について、可能なかぎり警察署の参画が必要というのは、削除をお願いします。」との意見を出し、奥山医師が「今の段階では「必要に応じて」の方がよいのかなと思っています。というのは、警察はコントロールが効かないのですよ。こうしないでといったことをしてくれちゃうのですね。それで上手くいかなくなるというケースが結構多いので」と発言。「うちの町のケースで言いますと、警察は完全に入ってもらっていて、すごい協力的なのですね」(中標津町子育て支援室長)などの意見もありましたが、現行指針のような記載となっています(下記議事録p27~28)。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000170060.pdf

●宮島清社会事業福祉大学教授は埼玉県の児童相談所OBで、厚労省の社会保障審議会児童部会、児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会等多くの委員会の委員を歴任されておられます。

●佐柳忠晴さんは言うまでもなく元東京都児童相談所所長です。
(高島惇弁護士は、ご自分のHPによると「児童相談所に一時保護されたお子様について児童相談所と交渉して自宅復帰を目指すとともに、状況次第では行政庁や裁判所にて児童相談所の処分を争うことで、家族の再統合を早期に実現すべく活動いたします。また、児童相談所の対応に問題がある場合は、別途国家賠償請求訴訟を検討いたします。」とされており、むしろ児童相談所と対立する親のご依頼を受けることが多いようですので、上記の方のような関係ではないと思料いたします。)

 それにしても、現行の「要保護児童地域対策協議会設立・運用指針」では、「主たる支援機関の中でも警察署は、通報を受けて子どもの安全確認 に対応する機関であり、地域協議会で登録されたケースを把握しておくことは安全確認時の判断に大きく資することとなる。このため、必要に応じて警察署の参画を求め、情報共有、意見交換等を行うことが求められる。」と記載されており、警察の役割をよく理解して書かれています。厚労省の原案どおりの「可能な限り」ならなおよかったです。加藤教授、奥山医師の意見は私の立場からは誠に残念で、原案どおりなら今頃全国の要対協の充実がより図られ、警察を含めた関係機関の情報共有と連携がより進んでいたことでしょう。厚労省にはこのWGの時点でもっと頑張ってほしかったです。私に相談してもらいたかったです。私から警察の機能・役割と実態に大変な誤解があると思われるこのお二方に、警察はそんなひどいものじゃないですよ、警察の役割は犯罪捜査はごく一部でメインは子どもを守ることにあるんですよ、児相が案件を抱え込むよりも格段に子どもを守ることができるのですよ、ということを全力で説明し、ご理解いただく機会を与えていただきたかったです。私はかなり前から厚労省の役人はほんとはよく分かっていると思っています。お世話になっているとはいえ周りの方を気にしすぎじゃないでしょうか。そういう方に遠慮して子どもの命を危険にさらす対応をを続けることが許されるわけもありません。学者や医師、弁護士、児相OBなどは子どもの命を守る責任を有する行政や警察の立場にいない方たちなのです。

2 前のブログでも指摘しましたが、今回の千葉県の検証委員会の委員長の川崎二三彦氏も児童相談所のOBで、この方は平成26年の千葉県市原市乳児虐待死事件の検証委員会でも委員長をされ、他にも千葉県の児童相談所OBの方が委員をされています。しかし、その報告書には警察との連携の「け」の字もありません(平成30年5月)。

https://www.pref.chiba.lg.jp/jika/jidou/press/2018/documents/00dai4jihoukoku.pdf

 この事案は、乳児が骨折させられ、医師から虐待の疑いが強いとの意見を入手しながら、父親が否定したことをもって虐待とは言い切れないとして、警察に連絡もせず、一時保護を解除し、家に戻してしまい、その直後に虐待死させられています。今回の心愛さん事件と同じ構図なのです。私どもの主張のように、児童相談所が案件を抱え込むことなく警察と全件共有していれば(骨折させられ医師が虐待の疑いが強いという意見ですからなおさらですが)、警察が直ちに捜査し父親の犯行と分かり、乳児は殺害されることはありませんでした。また、一時保護解除の際に警察に危険な家庭でないか調査を依頼することをしていれば、覚せい剤の前歴があったのですから解除しなかったでしょうし、それでも一時保護を解除するのなら、せめて市町村、警察、母子保健部局等と連携して頻繁に家庭訪問して子どもの安否を確認するということをしていれば、乳児の命は救えることができました。しかし、川崎氏が委員長の検証報告書はこのような指摘、提言は一切なく、警察との連携の「け」の字もありません。

 私どもの指摘するような内容の提言を記載していれば、千葉県もそれを受け入れ、今回の心愛さんを救うことができた可能性が高いのです。的確な再発防止策を提言していないのです。この方が児相OBであるということも含め、この検証委員会の報告書の原因分析と提言の内容、委員の人選の在り方についてマスコミは問題提起し、千葉県議会は議論すべきだと思いますし、千葉県が今回の心愛さんの検証委員会でもこの方を委員長に委嘱し、果たして再発防止に資する提言を期待できるとする根拠は何か、そもそも児童相談所OBを委員長とする検証委員会でいいのかという点についての議論が必要です。

3 児童相談所OBやこれまでの厚労省の審議会の委員などを歴任されている方は、やはりこれまでの取組・方針―警察との連携に消極的―を自ら実行、あるいはうち出されてきた方であり、私どもの要望のような厚労省や児童相談所の嫌がることを主張しにくい、私どもの主張はこれまでの自分の意見と違うので賛同しにくい(上記1奥山医師のご発言参照)のではないかと感じています。こういう方々は厚労省や自治体の純粋な「第三者」とは言い難く、虐待死事例の検証という、厚労省や自治体の反対することであっても指摘することが当然求められる委員会のメンバーとすることに慎重であっていいのでは、委員の人選は、学者は児童福祉の分野ではなく行政法や刑事法から、弁護士は当該自治体の児童相談所の常勤あるいは非常勤弁護士などでない弁護士から、そして虐待されている子どもたちはまぎれもなく「声を上げることができない犯罪被害者」ですから犯罪被害者や遺族の方などを入れるようにしてはどうかと思い、今後厚労省や千葉県、東京都などには求めてまいりたいと思います。

 また、以上に関してはマスコミも留意すべきです。そもそも官庁や自治体は自分たちに甘くしてくれる方を委員と選びたいと思うのは当然で、そういう方が長年委員をやっているのです。私に厚労省や東京都や千葉県が声をかけるわけがないのです(最近は警察庁も)。NHKのみならずマスコミ各社は、役所の審議会の委員に重用されている方はそういう方なんだということ(児相OBはもちろん)を理解の上、日曜討論などの討論番組のメンバーの人選をする必要があることは言うまでもなく、そういう方を何人もメンバーに入れればどういう議論になるか明らかで、下手をすると「政府に忖度か」と言われかねないし、報道倫理の問題も出てくるのではないでしょうか。

 それにしても、このような問題があるのではということまで私に思いつかせていただいた今回のNHKの「完全アウェイ」の人選はまさに深謀遠慮だったと、NHKのすごさに改めて感じいっております。