ブログ133 鳥取県で全件共有実現・「正論」5月号に拙稿掲載・千葉県は「スーパー児童福祉司」ぞろいか

1 4月2日、鳥取県で全件共有と連携しての活動に取り組むこととされました。これで20自治体となりました。ありがたい限りです。

2 さて、「正論」5月号に「子どもを救わない 児童相談所の闇」という論文を掲載していただきました。昨年の東京都目黒区結愛ちゃん事件、今年の千葉県野田市心愛さん事件等児童相談所のずさんな対応で救えるはずの子どもの命が救えなかった事件が続きながら、東京都や千葉県等の児童相談所と政府が有効な対策を講じない現状とその背景、構造を書いてみたものです。
 拙稿にも記載していますが、なぜ、こんなずさんな対応がいつまでも変わらないまま放置されているかというと、児相と警察の情報共有・連携を規定しない児童虐待防止法の甘すぎる「岩盤規制」があり、児相にとり警察と連携しなくていいという情けなさすぎる「既得権益」があり、(本当に子どもを守る気があるのか理解に苦しむ)それを守ろうとする学者や医師、弁護士らの「専門家」(厚労省や自治体の児童虐待に関する審議会や専門委員会の委員として政策に関与してきた)と児相や「専門家」に同調する議員がいるという構造があると感じています。
 「加計学園」問題で「業界と役所、族議員」が岩盤規制により既得権益を守り、新規参入を拒むという構造が明らかになりましたが、それと同様の構造です(念のため、マスコミではなぜか加計学園や官邸ばかりが批判されていましたが、真に批判されるべきは、岩盤規制により既得権益を守ろうとし新規参入を長年拒んできた文科省、獣医師学部既設の大学や獣医師学会、族議員です)。この点については、是非拙稿をお読みください。
 ただ、児相の中にも改革しようという動きは古くからあり、自県で警察等関係機関と連携していれば救えたはずの子どもの命が救えなかった事件を反省教訓として、高知県では平成20年から、大分県では平成24年から、広島県、岡山県でも同様にかなり前から、児相と警察との全件共有と連携しての活動が取り組まれ、結愛ちゃん事件、心愛さん事件が起こったことから改革の動きは急速に広まり、現在では20自治体で取り組まれるまでになっています。

3 問題は、結愛ちゃんと心愛さんを救えなかった肝心の東京都と千葉県が一向にそれを受け入れないことです。3月27日、千葉県は千葉県警察とまたまた一部の共有にとどまる協定を締結しました。
 なぜ、鳥取県ほか多くの府県が千葉県の事件を教訓として全件共有と連携しての活動に取り組みながら、肝心のとんでもない事件を引き起こした千葉県がいつまでも貴重な事件を教訓とせず、いつまでも有効な再発防止策を講じないのか。千葉県は子どもを守ることが億劫なのか、警察と連携して子どもを守るぐらいなら子どもが虐待死してもいいと決意しているのか、子どもに何かうらみでもあるのかと、感じざるを得ません。
 今回の千葉県の協定では、児相から警察に提供される事案は県子ども虐待対応マニュアルの緊急度アセスメントシートで緊急度AA、緊急度Aに該当すると児相が判断した案件等に限定してしまっています。千葉県の児相は「スーパー児童福祉司」ぞろいなのか
何度も言っておりますが、職員の主観的な判断にゆだねごく一部の案件しか共有しないままでは、いつまでも同じ事件は繰り返されるだけです。これまで児相が緊急性が低い、虐待でないと判断した案件で多くの虐待死が起こっているのです。「緊急度AA」は共有するといっても、1回や2回の家庭訪問で虐待リスクの正確な判断など神ならぬ人間の身でできるはずがありません。これは児相職員のみならず警察官でも市職員でも教師でも同じです。私も警察にいましたが全く自信がありません。千葉県の児相は「スーパー児童福祉司」ぞろいで、1回や2回の家庭訪問で虐待リスクの正確な判断ができ、警察と連携して子どもを守るべき案件とその必要がない案件を見分けることができ、警察と連携せずとも子どもを守れると、宣言しているようなものです。
 関係機関との全件共有が必要だというのは、一つの機関だけで虐待リスクの正確な判断などできるわけがない(その後の対応も含めてですが)というところからきているのですが、千葉県は心愛さん事件を引き起こしながら一向にそのように考えません。ここまでくると、通常の社会人としての理解力が不足しているというよりは、前記の通り、子どもを守ることが億劫で、警察と連携して子どもを守るような面倒くさいことをするぐらいなら子どもが虐待死してもいいと決意しているとしか思えません。
 私は、千葉県の児相職員の方が大変気の毒に思います。彼らの多くの方は警察とちゃんと連携して対応したいと思っているのです。自分たちがスーパー児童福祉司とは思っている人などいないでしょう。こんなごく一部しか警察と連携しないままで的確に対応できるなどと誰も思っていません。どのレベルで現場の職員の意向が捻じ曲げられているのか。厚労省や「専門家」と言われる学者、医師、弁護士らの主張する児相と警察との情報共有をごく一部に限定しようとする主張は、現場の児童福祉司や所長に責任をすべて押し付けて(一つの機関だけで対応できるわけがない)、何か起きると「専門的能力がない」と攻め立てて、組織としての有効な再発防止策―児相と警察との密接な連携―をいつまでも打ち出さず、彼らを苦しい立場に置かせたままで、子どもをみすみす虐待死に至らしめているのです。