ブログ174 検査数が少ないまま緊急事態宣言の解除は可能かー検証の必要性

 学校の休校措置、外出自粛がなされることにより、家庭内での子どもへの虐待、DVの増加が強く懸念されていますが、虐待が原因で家にいることができず家出、深夜徘徊を余儀なくされ、繁華街等で暮らしている子どもたち(一部20歳以上の人もいます)は、居場所となっていたインターネットカフェが閉鎖されたことにより益々犯罪被害に遭う危険が高まっています。そこでこのような子どもたちが安心して寝泊まりすることができる施設を無償で提供し、その後も引き続き児童相談所、市町村等がフォロー、支援することを求める要望書を国、自治体あてに提出しました(5/1添付参照)。

新型コロナウィルス感染拡大による営業自粛、学校休校、外出自粛等に伴う子ども・若者への犯罪、虐待の増加を防止するための緊急要望書(20020501)

1 さて緊急事態宣言が5月末まで延長がなされ(5/4)、安倍総理の記者会見で、感染者数は減っている、十分な減少とは言えないが、収束に向かいつつある、という言及がありました。小規模事業者への配慮の必要性も高まっており、5月末には解除されるような雰囲気になっているように感じますが、PCR検査をごくわずかしかしていない中で、症状があっても多くの検査を拒否しているままで、解除をどのような根拠で判断できるのか、感染の全体像が今も分からず、1ケ月後も分からないままで、解除の判断をどう適正にできるのでしょうか。
 他国のように、かなり多数の検査をして感染者数をそれなりに正確に把握していればそれが減ったということは、解除するかなりの根拠になりますが、日本がこのまま検査数を低く抑えたままで、(氷山の一角である)感染者が減ったということで解除してしまうと、感染が再拡大し、普通の生活がいつまでもできないことになることを危惧しますし、解除に納得しない国民が多くにのぼることは確実だと思います。

2 しかし、それにしても、韓国やドイツや多くの国のように検査を当初から症状のある人に確実に行い、陽性者を症状別にトリアージして医療崩壊を回避していれば、感染の拡大はもっと早期に抑えられ、日本では緊急事態宣言の必要もなかったのではとさえ思われます。
 いつまでたってもPCR検査が増えないのは、どういうことなのか。当初からPCR検査を極めて限定するという誤った判断を厚労省・専門家がしていたわけですが、一般人である私ですら2月中頃から問題提起し、安倍総理も4月6日に1日2万件にするという方針を示したにもかかわらず(2万件というのは他国と比べて少なすぎると思いますが)、現時点でも1万件にも達しないというのは、逆立ちしても日本では能力的にできないのか、それとも厚労省や東京都などの役人、専門家がサボタージュしているのか、あるいは医療機関が協力しなかったのか(日本医師会や東京都医師会等が検査拡大に大変ご努力されていることは理解していますが、つい最近まで多数の医師がテレビやSNSで検査拡大に反対していましたし、私の検査拡大を主張するブログやSNSに対しても医師の方から多く反対意見がきました。日本感染症学会、日本環境感染学会は4月2日になっても「PCR検査の原則対応は、「入院治療の必要な肺炎患者で、ウィルス性肺炎を強く疑う症例」とする。軽症例には基本的にPCR検査を推奨しない」という声明を出しています)、一体だれが何を、どういう理由や思惑で、どういうことを主張し、対応していたのか、検証し、その責任を明らかにしなければなりません。

 尾身副委員長が5/4の記者会見で様々な理由を言っていましたが、問題になってきた1月末から、保健所に頼らず民間を使う、医療機関でもっと検査を行えるよにする(様々な条件を緩和して)、検査機器を増強する、検査キットを十分にそろえる、検査人員の育成を図り増強を図るなど、他国でやっているような取組を本気で取り組めば、3ケ月もあったのですから現時点で1万件にも至らないような、OECD諸国では最低レベルの検査態勢にはなっていないはずです。不十分であることはようやく認めましたが、できなかった言い訳ばかりしている感じでした。

 一体、これまで何をやっていたのか。是非、時系列で、厚労省や東京都、専門家のとった対策や提言を明らかにし、それを検証して、ああ日本の国力では最初から無理だったのだなということかもしれませんし、厚労省や東京都、専門家の無策・無能のせいだなということかもしれませんし、いずれにしても理由を明らかにし、うやむやにしないようにしなければなりません。
 いずれにしても、厚労省や東京都がいつどういう政策を取ったのか(取らなかったのか)、「専門家」が一体全体、こんなに検査件数を限定することをいかなる理由で正当化したのか、3/19に「専門家会議」がなぜ甘い見通しを公表したのかなどを明らかにすることを求めます。
 むしろ検査数を限定したことにより多くの無症状陽性者が来院・入院し医療現場で感染が拡大、一部で医療崩壊を招いてしまい、これにたまらず、医師会等が独自に検査を実施することに至っています。日本医師会の横倉会長は「医師が必要だと判断しても保健所の対応が追い付かず検査につながらなかったのが問題だった。感染経路が不明な感染者が5割を超えた3月20日ごろから検査の拡充を訴えたが、政府はなかなか動かなかった」と発言されています(西日本新聞4/26)。押谷教授が「クラスターさえ見つけられれば制御ができる。PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由だ。」という趣旨のことを、3/22のNHKスペシャルで言われていますが、医療現場の訴えは知っていたのでしょうか。日本以外の国で、こんなに検査を限定することを正当化した「専門家」はいるのでしょうか。日本の「専門家」はいかなる思考過程でそのような考えに至ったのか、説明を強く求めるものです。

https://www.thinkkids.jp/archives/1869

 さらに、政府や東京都、専門家とも、それができない理由を中々説明しない、反省の姿勢も見せず、責任を認めない、という対応で誠実性に欠けます。言い訳ばかりして、当初の判断の誤りもいつまでも認めません。検査の目安である「4日以上の発熱」という目安も今も変えませんし、検査抑制により在宅で死亡する患者が増えてきた4月22日には専門家会議のメンバーが「4日様子を見てくださいというメッセージに取られたのですが、そうではなくて・・・」と説明しています。しかし、「4日間様子を見てください」というメッセージだと私も多くの国民も信じて、発熱した多くの人は苦しくても守ってきたものを、国民が誤解したのだともとれる発言はちょっとありえないように思います(しかも、そもそも政府も専門家も保健所も「4日間様子を見てください」というメッセージをしてきたのではなかったのでしょうか)。

 厚労省、東京都は言うまでもなく、専門家の医師への信頼も著しく失墜しています(現場で奮闘しておられる医師の方のことではもちろんありません)。能力的にも誠実さにおいてもです。これは児童虐待についても同じです。世界の常識は感染症対策の基本は「検査と隔離」でしょう。その「検査」を少なくていいと言い続けた「厚労省」と「(感染症の)専門家の医師」の対応は、児童虐待で見られる、「児童相談所は警察と案件を共有し連携して対応しなくていい」と言い続け、アメリカやイギリスでは常識の、私どもの求める「児童相談所、市町村、警察等の全件共有と連携しての対応」を求める要望を拒否し続ける厚労省や東京都と「(児童虐待の)専門家の医師」と同様です。

 すべての結果責任は安倍総理が負うことになるわけですので、安倍総理は、他国と比べて著しく問題のある対応を続けたことに実質的な責任ある厚労省の役人・「専門家」(すべてではありません。西浦教授など危機的状況にあることを国民に伝えていただくなど素晴らしい対応をされた方は当然除きます)を入れ替え、効果のある対策をとれるスタッフにより、抜本的な対策を講じていただくことを強く期待します。いまの厚労省の役人や「専門家」への国民の信頼は著しく失墜していると思います。このままでは、いつまでも収束せず、すべてが安倍総理の責任ということになってしまうのではないでしょうか。

 本問題は、戦前の日中戦争・太平洋戦争、津波対策を怠り東日本大震災によりメルトダウンさせた福島原発に続く、政府・官僚・関係業界による無謀な、危機対応を怠った対応による、国家的大惨事です。本問題について政府・自治体・専門家の対応を検証し、責任の所在を明らかにしなければなりません。
 日本には責任の所在をうやむやにする国民性があると感じます。特に児童虐待の分野では顕著です。千葉県野田市心愛さん虐待死事件では、ずさん極まりない対応をした児童相談所関係者には懲戒処分は課されませんでした(懲戒に当たらない文書訓告を所長と前所長のみ)。これまでも児童相談所の怠慢により救えたはずの命が救えない事件が起こっても、ほとんど責任ある者へ処分はありませんし、それを問題視するマスコミもまずありません。責任をうやむやにする体質のままでいることが、いつまでも救えるはずの命が救えない児童虐待死事件が起こっても、これまで通りの対応でいいとし、警察との連携もしないまま児相が閉鎖的体制のままで、同じような事件を繰り返し再発防止が図れない大きな原因です。本問題においては、是非ともこれまでの対応を厳しく検証し責任の所在を明らかにしなければなりません。そうでなければいつまでも失敗に学ぶことなく、同じような失敗をし続けることになります。次に同じような感染症に襲われたときに、政府・自治体・専門家の医師たちが、今回と同じようなことを主張し、今回と同じようなことをするかもしれないのです。
 現場で奮闘しておられる医療従事者の方には心から敬意を表しております。

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