ブログ176 千葉県市原市で虐待死事件。千葉県はなんと「虐待対応は公表しない」方針

1 6月3日、千葉県市原市で、10カ月の次女に食事を与えず放置し1月に死なせたとして母親が保護責任者遺棄容疑で逮捕された事件で、母親らが住んでいた市原市は4日、昨年12月以降に2回、保健師らが自宅を訪問したが、次女を目視できていなかったと発表した、と報じられています(朝日6/5)。またまた、行政が関与しながら子どもの命を救えなかった事件が起こってしまいました。ところが、とんでもないことが・・・

2 当初この事件につき、千葉県と市原市は、児相や市の関与の有無につき発表を拒否していました。千葉県は、野田市の小4女児虐待死事件にからみ、新たに虐待死事件が発生した場合、県は児童相談所の関わりを含め、一切情報を公表しない方針を決定しており、県児童相談所改革室の戸村順一室長は3日、朝日新聞の取材に対し「個人情報保護の観点から児相の関与を含め、何も言わないことに決まった。野田市の事件は情報を出し過ぎた。不手際だった」と話した。と報じられています(朝日6/5)。

https://digital.asahi.com/articles/ASN647GB4N64UDCB00Y.html

 千葉県は、私どもの求める児童相談所と警察との全件共有と連携しての対応に今でも応じませんが、ついに、虐待死事件に児童相談所・市町村が関与していたかどうかすら隠すことにしたのです。千葉県は戦前か? 江戸時代か?お上のまずいことは知らせる必要はない!という姿勢が露わです。

3 このような千葉県の「隠ぺい」方針は、まずい対応を知られたくない、という動機に基づくものと考えられますが、その前提として、野田市心愛さん事件を何ら反省教訓とすることなく、今までどおり警察と情報共有も連携もせず、児相が案件抱え込みを続けるという、「今までどおりのことをしたい」「他機関との連携なんてめんどくさいことはいやだよ」という役人の度し難い体質があります。多くの自治体のように、警察とすべて情報共有して連携して対応することとすれば、隠す必要など何もありません。
 これまで40前後の自治体に要望活動をしていますが、千葉県、東京都、兵庫県、福岡県、福岡市、鹿児島県、横浜市など児相と警察の全件共有と連携しての活動を拒否する自治体の役人と会うと、強烈にこのような意識を感じます。とにかく「今までどおりのことをしたい」「他機関との連携なんてめんどくさいことはいやだよ」という強固な意志に基づき、連携できない無茶苦茶な理由を並べ立てます。そんな熱意があるのなら子どもを守る方に回してくれないかといつも感じます。改善しないことに全力を尽くすのです。

4 今回の千葉県の「隠ぺい」方針も、このご時世でよくそんなことやったな、と驚嘆するほどの無茶苦茶な対応ですが、千葉県が平気でできるのは、①リーダーシップ、ガバナンスの欠如―知事、副知事、部長、教育長クラスが、課長レベルを全く抑えきれない
②マスコミが「お役所」を批判しないという対応

が大きな原因です。
(1) まずリーダーシップ、ガバナンスの欠如です。誰がこんな「隠ぺい」方針を起案したのか? まさか千葉県の知事、副知事、部長クラスではなく、課長レベルだと思います(違っていればお知らせください。訂正します)。千葉県では「担当者レベル」のとんでもない方針をやめさせられないほど、リーダーシップ、ガバナンスがないのです。下が好き放題しているのです。千葉県、東京都、兵庫県、福岡県、福岡市、鹿児島県、横浜市、札幌市など、警察との連携を拒否する自治体でも、私が自治体への要望活動をして面談して感じるのは知事・副知事や市長・局長は実は賛成なのですが、児相の所長・課長レベルが反対し(現場の職員は賛成)、それを知事や市長が押し切れないという実情です。さすがに知事や市長で児相が案件を抱え込んだままでいいと信じている人はいません。しかし、役人が嫌だということをやらせる力がないのです。(愛知、神奈川、大阪、神戸などの自治体では、知事・市長がリーダシップを発揮して役人の反対を押し切って受け入れていただきました。もとろん高知、広島、静岡や沖縄、京都など現場の児童相談所が進んで全件共有していただいたところも少なくありません)。千葉県、東京都、福岡など役人の好き放題を抑えきれない自治体トップのガバナンス、リーダシップの欠如がひどいということです。
(2) 次にマスコミが「お役所」を批判しないことです。今回朝日新聞が批判記事を書いてくれたのはありがたいですが、しかし千葉県は3月にも松戸市の事件で同様の対応をしたことを共同通信が配信し、私はそれをブログやメルマガでマスコミ各社の多くの記者に「おかしいじゃないか。ちゃんと批判してほしい」とお知らせしたのですが、その時はどこも書いてくれませんでした。

https://www.thinkkids.jp/archives/1865

 児童虐待の対応では厚労省や千葉県、東京都などの自治体は無茶苦茶の対応をしています。新型コロナウィルス対策でも厚労省なども同様です。しかし、マスコミは一過性の批判はしますが、役所の体質そのもの、構造的な問題の改善の必要性―児童虐待で言えば、児童相談所の警察等関係機関と情報共有も連携しもしない閉鎖的な体質―についてはほとんど批判しません。役所がほんとに嫌がることは批判しないのです。記者クラブがあるからなのか、役人が好きなのか、「両論併記」が正しいと思っているのか、全く理解できませんが、マスコミには、今回のような「隠ぺい」方針とそれを許す知事らのリーダシップのなさについてははもちろん、その裏にある、児童相談所の役人の「今までどおり」「他機関との連携なんてしないよ」という救えるはずの子どもの命を救えないこととなる対応をいつまでも続ける役人の非道さを批判していただくよう強く期待します。
 私どもからは、何度目かの、千葉県(千葉市にも)に対し、このような「隠ぺい方針」を改めるとともに、かかる方針を取る根本原因である「警察等他機関との情報共有と連携を拒む閉鎖的体質」を改め、他の多くの先進的な自治体と同じく、警察と全ての案件を共有し連携して活動するよう求めてまいります。