ブログ198 たまひよ記事と岐阜県で同部屋で常駐の取組

皆様 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

1さて、本日、ヤフーニュースを見ていますと、私が年末にインタビュー受けた「たまひよonline」が掲載されていました。

児童虐待の相談件数が過去最多。子どもを虐待から守るため、これを知っておいて!【専門家】|たまひよ (benesse.ne.jp)

子どもの虐待は、内縁関係などではなく実親からの虐待が大半、しつけと虐待のボーダーラインとは【専門家】(たまひよONLINE) – Yahoo!ニュース

この中で、周りの人の通報先として、次のように述べました。

虐待で子どもが亡くなるのは、まわりの大人が親の言い分だけを聞いて、それをうのみにして放置することが原因の1つです。「虐待をしているかな?」と感じたときは、それが知り合いでも、緊急を要する場合は警察に通報するするほうがよいと思います。

 このような話は、以前から講演や研修でもしています。周りの人が通報するのは、市町村や児童相談所ではなく警察が最適です。市町村・児童相談所と警察とのリスク感覚は大きく違いますし、警察なら110番を受ければ直ちに家庭訪問しますが、市町村・児童相談所では数日かかることもあります。摂津市で3歳児が母親の同居男に熱湯で殺害された事件では、母親の友人が摂津市に「このままでは殺されてしまう」と訴えたにもかかわらず、摂津市は動かず、子どもは殺害されてしまいました。ご友人は子どもを救いたいと非常に立派な行動をされたわけですが、その折角の行動が摂津市の対応により実を結びませんでした。警察に通報していただいていればと残念でなりません。この事件の教訓は、市町村と警察との全件共有の必要性と、子どもを守りたいと思えば、通報は警察とするべきだということです。

2 一般住民(厚労省の統計では「近隣知人」と表記)から警察への虐待通報は児童相談所に対するそれよりも数倍に上っており(児童相談所には自治体・学校・医療機関・福祉事務所などの公的機関からの通報が多い)、一般住民、国民は、警察を児童相談所よりも子どもを虐待から守る機関として期待しているところです。ところが、現行児童虐待防止法では通報先に警察を含めていません。この法律は議員立法です。当時のかかわった国会議員は、警察を排除して児童虐待に対応できると考えたのでしょうか。それが今に至る、多くの児童相談所が警察と情報共有も連携も拒むという態勢につながっていると思います。
 警察の家庭訪問は、逮捕するか否かにかかわらず、虐待親への虐待のかなりの抑止力となり、かつ、家庭訪問で把握した子ども・家庭の状況を児童相談所や市町村に連絡することにより、児童相談所等が得られる情報も増えることになります。また、児童相談所等の職員には暴力的・威圧的な態度を取り子どもの面会を拒否する親も、警察が家庭訪問すれば子どもの面会に応じており、その場合に警察が子どもがけが・衰弱している場合には緊急に保護しているという実態にあります。
 このような実態を国民の方がよく知っているからこそ、多くの国民は、虐待の通報先として警察を選んでいると思われます。法律が実態にも、国民の意識とも乖離していると指摘せざるを得ません。

3 次に、年末に、中日新聞で、既に全件共有を実施している岐阜県の取組として、児童相談所、教育委員会、警察が「同部屋に常駐 虐待対応」、同じ事務所で勤務する方針としたと報じられています。

令和2年12月22日中日新聞「岐阜県の児相・教委・警察同部屋で常駐」①

令和2年12月22日中日新聞「岐阜県の児相・教委・警察同部屋で常駐」②

私は取材を受け、「児童相談所と警察が同じ事務所で一緒に調査するのはイギリスのやり方で理想的だ」とコメントしました。全件共有は第一歩に過ぎません。同じ事務所に勤務して、通報を受ける時点から、案件を共有し、原則一緒に家庭訪問、調査をする、そして、事案に応じて、たとえば、身体的虐待であれば警察がメインで対応、ネグレクトであれば児童相談所がメインで対応する、もちろん常時情報共有しながら、というそれぞれの機関の能力、特色を生かし、ベストの力を発揮して子どもを救い、守っていくという連携を是非目指していただきたいと思います。

 情報システムを整備して常時全件共有を実現している埼玉県や岐阜県など、進んだ連携を実施する自治体が増えてきているのは誠にありがたいことです。一方で、いまでも、全件共有を拒む東京都や福岡県などには、このような先進的な自治体の例を紹介するなどし、働きかけたいと思います。