ブログ36 新たなご賛同者の紹介と厚労省による所在不明児童の数の発表

1 いつも署名活動にご協力賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。このたび、新たなご賛同者として、

○今井健夫(三宅・今井・池田法律事務所・弁護士)さま

におなりいただきました。誠にありがとうございます。
 また、本日第3回「児童虐待防止対策に関する関係省庁副大臣等会議」が開催されました。その内容は分かり次第お知らせいたします。

2 本日(2014年11月13日)、厚労省から、本年5月1日時点での所在不明児童2908人について、10月20日現在で、海外に出国していたものが1185人(41%)、残る1723人について子どもの所在が確認されたものが1582人、この中で虐待のリスクのあるとされた子どもは93人、依然として所在不明の子どもか141人との発表がありました(本日産経新聞web版)。

(1)所在不明の児童の多くが発見されたことは大変喜ばしいことですが、141人の子どもが所在不明であるということは深刻であり、今からこれらの子どもたちを警察が全力で捜索しなければなりません。

(2)所在不明児童の調査はこれで終わりではもちろんありません。横浜市の例でいうと、平成25年度の乳幼児健診受診対象者数(4か月児・1歳6か月児・3歳児)は9.5万人、未受診率は4.9%ですから、横浜市だけでも年間で4600人余りの乳幼児健診未受診の子どもが生じているわけです。全国でいうと、横浜市の人口は371万人で、全国の人口は1億2700万人ですから、年齢別構成が地域で異なるでしょうから極めて乱暴な計算ですが、毎年15万7000人生じていることになります。(ほんとかなと思う数字で、間違っていることを祈ります。間違いをご指摘ください)。そのうちの何%かは所在不明となっていることから、所在不明児童はいわば常に大量に生じているのです。したがって、市町村は、これらの数の所在不明児童の安否を常に確認しなければならず、今後、ルーティーンとして、未就学・乳幼児健診未受診等で所在不明の児童の所在と安否の確認調査を着実にやっていかねばなりません。当然のことですが、今回の調査は一過性の特別なものでは決してないのです。

(3)私どもは、所在不明児童問題について、次のとおりの法改正を訴えています。

1 市町村は、所在不明の就学年齢でありながら未就学の児童、健康診査未受診乳幼児について、関係部局間及び転出先の市町村、児童相談所との間で必要な情報提供をし、システムの整備を含め情報共有を行うとともに、これらの子どもの所在を調査し、その安全を目視で確認しなければならないこととする。なお、DVからの避難等の場合には必要な情報漏えい防止措置を講ずる。
2 市町村、児童相談所は、前項の活動を行ったにもかかわらず子どもの所在又は安全を確認できない場合には速やかに警察に保護を要請するものとし、警察は直ちに子どもの捜索を行わなければならないこととする。
3 自治体、郵便局、電話会社等の関係機関は、市町村、児童相談所、警察から所在不明の子どもの発見・捜索のため、親の転居先、関係者の住所、電話の通話先、携帯電話の位置情報等子どもの所在の発見に資する情報の提供の要請を受けた場合には、これらの情報を提供することとする。

市町村・児相・警察に確実に常時かなりの数生じ続ける所在不明児童の調査・発見・保護活動を行わせるには、しかも、これらの組織に所在不明児童の保護のための業務を「特別な一過性の業務」ではなく「ルーティーンの業務」として着実に行わせるためには、上記法改正が是非とも必要であると考えます。なぜなら、

○厚木市理玖ちゃん事件、横浜市あいりちゃん事件、豊橋市杏奈ちゃん事件などから明らかなように、市町村、児相、警察という組織は、この問題につきこれまで恐るべき無関心を示し、厚労省や文科省が出していた通知を無視し
○目視による確認も徹底されず、親が「元気にしている」などといえばそれをうのみにする、警察への捜索要請もしない、警察も要請を受けてもそれを受理しないなどの不適切な対応が見られ、
○個人情報保護、守秘義務を名目として、自治体内部でも他の自治体との間ではなおさら、情報の提供も共有もせず、連携が極めて不十分であり
○そもそもこれらの事務は自治事務で、国の出す通知には自治体は従う義務はなく、国の指導には強制力がなく
○所在調査に有効な転居先の住所、携帯電話の位置情報などを関係事業者が市町村や警察に提供しないという問題がある(この件については総務省に質問し、回答待ちの状況です(10月31日の厚労省専門委員会での私の提出資料参照))。

ことから、法律により所在不明児童に関する情報の共有と連携しての確実な発見・保護活動を義務付けるとともに、有効な調査手段を与えなければ、常時かなりの数生じ続ける所在不明児童の調査・発見・保護活動が着実に、ルーティーンとして行われるとは到底期待できないからです。
 なお、「再度自治体宛に通知を出せば十分です」などとは厚労省等もさすがに主張しないのではと思います。国による通知には強制力がなく、これまで無視されてきましたし、連携はそんな簡単には進みません。所在調査に必要な郵便局や電気通信事業者に対する市町村や警察の調査権限もないままです。こうした実態やそれを改善するための私どもや横浜市さんなどの要望を認識しながら、もし厚労省等が上記のような主張をし、法律による義務付けに反対し、それが通ってしまった場合には、その後ずさんな対応により子どもが犠牲になる事案が生じたならば、厚労省等の責任は免れないものになるからです。

(4) さらに重要なことは、所在不明の児童の所在が確認されたということは終わりではなく、虐待から子どもを守る活動の始まりということです。今回の調査でも所在が確認された子どものうち93人が虐待リスクがあるとされています。これらの子どもについては、児相、市町村、警察とが情報を共有し、人員を出し合って可能な限り頻繁に家庭訪問して、子どもの安否の確認と親への指導・援助を行っていく必要があるのです。

 所在不明児童問題は言うまでもなく子ども虐待問題の一環であり、独立してとらえられるものでないことはもちろん、虐待から子どもを守る取組みの終わりではなく始まりであることを認識しなければなりません。そして、その改善のためには、私どもの訴える法改正を実現する必要があることを(何度も繰り返し恐縮ですが)是非ご理解いただきたいと思います。