ブログ37 厚労省専門委員会への期待

 本日(2014年11月14日)、第4回厚労省専門委員会が開催される予定と聞いております。児童虐待防止副大臣会議が本年8月29日に設置され、同9月19日に厚労省の専門委員会が設置されました。官邸が副大臣会議を設置したので、あわてて厚労省が専門委員会を設置したのだろうなと推測していますが、私どもが昨年要望書を提出しても全く何もせず、返事さえ一切なかった厚労省が、官邸が動くとササッと動くのは見事というか、役所がどちらを向いて仕事をしているのか鮮やかに示してくれました。それはともかく、折角設置していただいた委員会ですから、是非、委員の方には子ども虐待死ゼロを目指すための有効な対策を打ち出していただきたいと思います。
 
 しかし、同委員会に厚労省から提示された次の5つの課題は意外と言いますか、率直に言って違和感があります。

○妊娠期からの切れ目のない支援の実施
○初期対応の迅速化や的確な対応のための関係機関の連携強化
○要保護児童対策地域協議会の機能強化
○児童相談所が虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制強化
○緊急時における安全確認、安全確保の迅速な実施

 これらが重大な課題であることはもちろんですが、これらの課題は直接虐待死の防止に直結するというよりも、運用面の一般的な課題です。「妊娠期からの切れ目のない支援」については、望まぬ妊娠等子育て困難な妊産婦をいかに把握し早期に支援するかということが課題ですから、私どもの提案している案が盛り込まれると思います。また、「初期対応の迅速化や的確な対応のための関係機関の連携強化」には、児相と市町村と警察の虐待情報の共有の制度化なども当然に含まれると思います(含まれなかったら論外です)。しかし、他の課題は虐待死防止策に直結するというよりも、これまでの懸案事項をそろえたもののように思います。これらが重要な課題であり、改善を進めることはもちろん必要です。しかし、これだけ児相や市町村、警察の怠慢あるいは制度の不備により救えたはずの命が救えなかった事件が頻発しているのですから、上記の課題一般の解決というアプローチよりも、虐待死に直結する問題を、これまでの多数の虐待死事例から分析し、対策を講じるというアプローチこそ重要ではないかということです。私が厚労省の専門委員会に提出した資料は、多数の関係機関の怠慢や制度の不備で救えることのできたはずの虐待死事例をとりあげ、命を救えなかった原因と対策、効果を検証したものとなっています。

[2014.10.31厚労省専門委員会への提出資料]

※提出資料は上記をクリックすると、PDFにてご確認いただけます。

 たとえば、厚労省の提示した課題の一つである「要対協の機能強化」というような漠然としたテーマではなく、厚木市理玖ちゃん事件、横浜市あいりちゃん事件、群馬県玉岡町優将事件などは、児相が家庭訪問しない、あるいは家庭訪問の間隔が空きすぎたことが原因で命が救えなかったわけですから、このような事件を二度と起こさないためには、虐待家庭への訪問の回数を増やすにはどうすればいいか、児相の人員が圧倒的に不足していることを踏まえるとそれには児相と市町村と警察が虐待情報を共有し人員を出し合って家庭訪問をできるだけ多くするという方策が有効でないか、というようなアプローチが必要ではないかということです。要対協の開催回数を増やすとか、メンバーを増やすとか、専門の職員を配置するとか、そんなことを議論しても事態は何ら変わらないのです。
 また、葛飾区あいらちゃん事件のような児相が把握していながらその家庭の情報を警察に提供せず、110番通報で駆け付けた警察官が親に騙され、虐待を見抜けずその直後みすみす殺されてしまうという事案を防ぐためにはどうするか、そのためには、児相の把握している情報を警察に提供するしかないわけで、そのような対策を提言してほしいと思います。といいますか、このような対策を提言しない理由はないでしょう。
 児相の一時保護の適正化もそうです。いったいどれだけの子どもが児相の一時保護の不適切な運用で命が救えなかったかという事実を直視すると、一時保護を子どもの命を守るものにしていくかについて考えることを外すことはできないと考えますが、厚労省の提示した5つの課題に含まれているようには読めません、この点は検討しないのでしょうか。

 救えるはずの子どもの命が救えなかった事例を直視して、原因を分析して、対策を考えることが必要です。厚労省の専門委員会には、提示された課題について検討することのみならず、私どもが提案している案についてもその是非を検討していただきたいと希望しています。もし、問題があるならその旨をご指摘いただき、よりよい案をお示しいただきたいと思います。より良い案をご提案いただけるなら、それはもちろんありがたいことです。
 
 是非、厚労省専門委員会の委員の方には、厚労省の提示した課題のみならず、虐待死防止に直結する対応策を打ち出していただきたく、強くお願いする次第です。