ブログ41 新たなご賛同者のご紹介と厚労省専門委員会の提言について

1 いつも署名運動にご協力賜っておりますことに厚くお礼申し上げます。
このたび、次の皆さまにご賛同者になっていただきました。

四方修さま(NPO法人日本障害者競技支援協会理事長、元大阪府警察本部長)
堺市女性団体協議会さま
櫻井よしこさま(ジャーナリスト)

誠にありがとうございます。心よりお礼申し上げます。

2 2014年11月28日、厚生労働省の専門委員会から「これまでの議論のとりまとめ」が出されました。
 私どもが署名活動をして実現を求めている法改正案は、厚木市理玖ちゃん事件、横浜市あいりちゃん事件、葛飾区愛羅ちゃん事件、群馬県玉村町優将ちゃん事件、茨木市紗弥音ちゃん事件など昨年から今年にかけて判明した数多くの悲劇を二度と繰り返さないようにするための対策を求めるものです。これらの事件はいずれも、児相、市町村、警察の連携のなさから、具体的には、虐待情報も共有せず、人員を出し合っての家庭訪問もせず、危険な家庭にいる子どもをほったらかしにしてしまい、みすみす虐待死に至らしめてしまったものです。そこで、このようなことがないように、虐待情報の共有と人手を出し合って虐待家庭にできるだけ頻繁に訪問し、子どもの安否を確認することをこれらの機関に義務付けるという法改正案を提案しているものです。
 しかし、厚労省の専門委員会の「これまでの議論のとりまとめ」は、昨年から今年にかけて立て続けに起こった、紗弥音ちゃん事件はつい先月です、このような事件がまるでなかったかのような記載ぶりです。どこにもこれらの事件があったという記載もなければ、これらの事件の再発防止に直結する対策もありません。

 言うまでもありませんが、理玖ちゃん、あいりちゃん、愛羅ちゃん、優将ちゃん、紗弥音ちゃんは、児相や市町村がほったらかしにせず、できるだけ頻繁に家庭訪問できていれば、命を救えたのです。逆に言えば、現場に出る職員の数と家庭訪問の回数を増やさなければ、虐待家庭で暮らす子どもは救えないのです。虐待する親と暮らしている子ども一人一人の家に、いかに多く家庭訪問し、子どもの安否を確認し、親への指導・支援をし、虐待の継続・エスカレートを防ぐかということが、虐待家庭で暮らす子どもの命を守る鍵なのです。そのためには、人員不足で、どうしようもない児相だけで家庭訪問するのではなく、児相と市町村と警察とで、虐待情報を共有して人員を出し合って家庭訪問するしかないのではないでしょうか。これだけ酷い虐待死が頻発しているという現状からは、虐待親と暮らす一人一人の子どものところにいかに頻繁に家庭訪問するか、現場に出る職員をいかに一人でも増やすか、ということにフォーカスを当てるべきではないのでしょうか。
 さらに、110番で駆け付けた警察官が親に「夫婦喧嘩」と騙され体に40か所のあざがあった愛羅ちゃんの体を調べず帰ってしまい、その5日後に殺害された葛飾区愛羅ちゃん事件(今年1月の事件です!!)では、児相がこの家庭の見守りをしていたという情報を警察に提供していれば救うことができたことは明らかです。虐待情報の共有が同種事案の再発防止に必要不可欠であることは明らかですが、何らの言及もありません。
 このままでは同様の事件が起こることは確実に予想されますが、なぜ有効性が明らかな対策が提言されていないのか不思議です。今回のとりまとめは最終提言ではないということですので、今後提言されることと信じております。
 今回の署名活動に多くの方に署名をいただき、多くの方にご賛同者になっていただいていますが、皆さん、頻発している悲惨な虐待死を起こさないために必要かつ有効な法改正案にご賛同していただいているのです。
 しかも、警察庁は新たな仕事をしょい込むことになるので、嫌がるのかなということは想像できますが、厚労省としては、警察が児相の助けに入るということになるわけですから、疲弊し、パンクしている児相の現場を救うことになり、本来は大歓迎する案ではないのかと思っているのですが、そうではないのでしょうか。この点も、多くの賛同者の方から「なぜ厚労省は賛成しないのですか」とよく聞かれるのですが、厚労省から私に何の説明もありませんので、私も「よく分かりません」と答えるしかないのが現状です。

 そして、連携するためには、何度も述べておりますとおり、法律で規定しなければ全く機能しません。現行の児童虐待防止法では、児相から必要がある場合には警察署長への「援助の要請」という規定はありますが(第10条)、特に危険が差し迫っていない通常時から、虐待情報の共有や人手を出し合っての家庭訪問、子どもの安否確認や親への指導・援助を連携して行うことは規定されていません。その結果、このようなことは全く行われておらず、多くの子どもの命が救えない状況が、何十年も続いているのです。
 縦割り意識が強い他機関同士で、日常的な事務、ルーティーンとなる業務に関して連携というのは、法律で書かれなければまず行われません。たとえば、交通警察と道路管理者は非常によく連携しています。連携しなければ現場はやっていけないのですけれど、道路法と道路交通法に詳しく、道路工事、交通規制、道路整備の際の協議とか意見聴取手続きが規定されています。
法律で規定され、実際に連携して協力して取り組むことによって、お互いに信頼関係が生まれ、年がら年中飲み会をやるようになり、お互い上司の悪口を言い合い、子どものことを話しあって、益々信頼関係が深まり、益々実質的な連携が強化されるのです。児童虐待防止法でそう規定することではじめて、児相と市町村、警察の信頼関係が深まり、実質的な連携ができるようになり、そして、多くの子どもの命が救えることになるのです。法制度として連携の仕組みを構築せず、口先だけで、あるいは通達で、適当に「連携しろ」なんて言っても、現場は連携などしませんし、できません。縦割りが強く、相手のことをよく知らない他機関同士での「連携」はそんな簡単なことではないのです。このことは、仕事をしておられる多くの方が実感しておられることではないでしょうか。
 なお、本日(2014年12月1日)の日経新聞に、佐世保市の高1同級生殺害事件で児相幹部による日常的なパワハラが逮捕された少女に関する精神科医からの通報の放置を招いたと、する見解で有識者検討会はほぼ一致したと報じています。虐待情報の共有あるいは所在不明児童に関する情報共有について法律で義務付ける必要があることが如実に示されています。法律で義務付けないと、こんなことで情報提供しないのです。パワハラは、児相のみならず警察、市町村どんな組織にでもあります。法律で義務付けされていれば、まさかこんな理由で情報提供しないことはないでしょう。他機関での情報共有も人手を出し合っての連携も、法律で義務付けられない限りなされないことはご理解いただけることと思います。

 また、警察の立場からは、児相と虐待情報を共有して、家庭訪問して子どもを守る取組を組織として行うのであれば、法律の根拠があった方がいいに決まっています。厚労省から警察庁に、そのような仕組みを法律を作りたいので、是非協力してほしいと要請すれば、警察庁も拒否しないのではないでしょうか。厚労省がそういう話を警察庁にしたのか、していないのか、したけれども警察庁が拒否したのかも分かりませんが、少なくとも、私が、本署名活動へのご協力をお願いした方で、このような児相と市町村、警察の連携の制度を法律で設けることに皆さん、一人残らず賛成です。反対はもちろん不要と言われた方は一人もいません。是非このことを厚労省にはご認識いただき、もしまだ要請していないのであれば、警察庁に速やかに要請していただきたいと思います。私は、警察庁は決して拒否しないと思います。