ブログ228 吉村大阪府知事にお会いして、児童相談所と警察とでリアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備を要望しました

1 本年6月19日、大阪府吉村知事にお会いして、児童相談所と警察とでリアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備を要望してまいりました。昨年10月7日に大阪市平野区で1歳の結翔ちゃんが母親の交際男から虐待死させられた事件後の昨年11月21日付で、大阪府知事、大阪市長、堺市長あてに下記要望書を提出しておりますが、その後進捗がないため、知事に直接お会いして要望いたしました(横山大阪市長には既にお会いして要望しております)。

「大阪市平野区結翔ちゃん虐待死事件を貴重な教訓として、縦割りを排し、児童相談所と警察
とでリアルタイムで最新の情報を共有するシステムの整備、連携マニュアルの作成等によ
り、連携してベストの力で子どもを虐待から守る態勢の整備を求める要望書」

2 本事件については、以前のブログで記載しておりますが、結翔ちゃんが大やけどで入院、病院から大阪市児童相談所に虐待の通報がありながら、母親と交際男が虐待を否定したことから「虐待ではない」として警察に連絡せず、交際男には電話で連絡しただけで面接はしないまま、その2ケ月後に虐待死に至らしめました。児童相談所は「当時の対応は適切だった」としています(2024年10月9日朝日新聞)。警察には9月末に警察の取り扱い歴がないかどうかの問い合わせはしていたとされています。
大阪市の児童相談所は、大阪府警と全件共有を合意していながら、このような幼児がかなり深刻なやけどを負い、病院からの虐待を疑う通告を受けながら、警察に通報していません。
全件共有して連携して子どもを守るという両組織の合意を守らないということだけでも公的機関の信頼関係を損ねる誠意のない対応ですが、その結果、子ども虐待死に至らしめてしまったことに大阪市の児童相談所の責任は誠に重大なものがあります(それを自分で「適切だった」と評価するのは全く理解できません)。
 このような深刻な案件を母親と交際男が否定したからと言って「虐待でない」と軽信することは大きな過ちで(これまでも全国的に児童相談所は多くの案件につき保護者が否定したことをもって虐待でないと判断しては、虐待死に至らしめています)、合意を遵守し、警察に連絡していれば、警察は、シングルマザー家庭で交際男がいる家庭であるということも踏まえ、虐待の可能性を疑い、交際男から詳しく事情を聴き捜査の上、男を逮捕できた可能性もありましたし(その後8月のやけどにつき交際男を逮捕しています)、逮捕に至らずとも警察の事情聴取で、虐待のかなりの抑止力となり、結翔ちゃんを救うことはできました。

3 そもそもこのような事態を防ぐために、すなわち児童相談所が独断で安易に「虐待でない」と判断し、子どもを虐待死させてしまう危険をなくすため、児童相談所と警察との全件共有と連携しての活動することを大阪市をはじめ全国の自治体のほとんどで合意されているのですが、今回の事件では実際には守られていないのではないかということが危惧されます。2023年6月の神戸市西区修ちゃん虐待死事件でも、神戸市は同様の対応をしています。保育所から傷があるという通報を受けながら、神戸市は「虐待でない」と判断、警察に連絡せず、虐待死に至らしめたものですが、神戸市も警察と全件共有の合意をしていました。
大阪市は、病院から通報を受けたこれほど重大な案件ですら警察に連絡していないのですから、かなり多くの案件を警察に連絡せず、相変わらず縦割り意識のまま案件を抱え込み、児童相談所の独断で「虐待でない」と判断し、虐待を見逃し、子どもを危険にさらし続けていることが大いに危惧されます。

4 そこで、児童相談所のこのような「案件抱え込み」「警察との共有忌避」により子どもを救えないという事態を防ぐためには、リアルタイムで案件を共有する情報共有システムの整備が必要です。これは、埼玉県で2020年に整備されたのを皮切りに、現時点で19自治体で整備されているものですが、児童相談所は自分の案件管理システムに通報を受けた虐待案件を登録するのですが、それに情報を入力すると、自動的に必要な項目につき警察署の端末にもその内容が表示され、警察と共有できるというシステムです。令和5年度補正予算でこども家庭庁の補助事業とされたこともあり、現在は、千葉県、兵庫県、奈良県、岩手県、神奈川県、横浜市、川崎市、愛知県、東京都等で整備されています(一部本年度整備予定)。本事件後神戸市は私どもの要望を受け入れていただき情報共有システムを整備することとされました。

「神戸市で児童相談所と警察とのリアルタイムでの情報共有システムが導入」

 もちろん、本システムは、大阪市のような「全件共有」を合意しながらそれを遵守せず、警察に案件を知らせず、縦割りの対応を続けることを防止するということだけを意図したものではありません。本来の目的は、縦割りの対応により救えるはずの命が救えないことのないよう、児童相談所と警察がリアルタイムで虐待案件を共有することで、虐待リスクをより正確に判断し、両機関が協力して迅速に児童の安否確認、保護者の指導その他の子どもを守る必要な対応を行うことにあります。埼玉県、兵庫県など本システムが整備された自治体では、児童相談所と警察との連携が画期的に進み、多くの案件で虐待を見逃すことなく、子どもたちを守ることができるようになっています。また、システムを整備することで、児童相談所と警察とがこれまで手作業、あるいは電話対応していた業務が効率化され、両機関の職員の多くの業務負担が軽減され、無駄な業務の削減、税金の無駄遣いの防止に資するものとなっています(現状とシステム整備の効果については添付のとおりです。吉村知事に説明し、お渡ししてきました)。

 是非、吉村大阪府知事、横山大阪市長、永藤堺市長におかれましては、大府県では大阪を除きすべての自治体で既に整備され、同様の事件を起こした神戸市ではそれを教訓として整備されることとされたことなども踏まえ、大阪府、大阪市、堺市の児童相談所と大阪府下の警察署の間に、来年度には上記の情報共有システムを整備し、救えるはずの子どもの命が救えないような虐待死事件の絶無を期していただきたくお願いする次第です。